執筆講座の講師たちが情報収集先として決まって挙げる、国立国会図書館と大宅壮一文庫。しかし、まだ誰の口にも上っていない場所がある。ライターの新たな情報源となる可能性を秘めた図書館が、西国分寺にオープンした。
武蔵国分寺公園に隣接する建物のコンセプトは「森の中の本の森」。
地元で人気のパン屋さんも営業中。
都立多摩図書館。
保有雑誌のタイトル数1万7千は、公立図書館としては国内最大級だ。大宅壮一文庫が約1万※だから、その規模が想像できよう。 ※2016年4月現在
2017年1月、JR西国分寺駅から徒歩5分の場所に移転オープンした。データベースやコピーサービスなど、情報収集する人向けの設備も備える。
「立川にあったときは、認知度はそれほど高くありませんでした」
そう語るのは同図書館の総括課長代理、宇井智美さん。建物が老朽化したことに加え、書庫も手狭になったため、現在の場所へ移転した。
「駅から近いですし、利用者は確実に増えています。以前は1日平均200人前後だったのが、移転後は平日で1000人、土日は多いと1800人近くの来館があります」
都立多摩図書館は、都立立川・青梅・八王子の3図書館を集約する形で1987年に設立された。立川図書館で収集されていた雑誌をベースに、2009年に雑誌の特性を活かしたサービス「東京マガジンバンク」を開設。創刊号も6,600タイトルを保有する。
「マガジンバンク開設のとき、雑誌を収集していた方から、創刊号を始めとする多くの寄贈を受けました。それで充実したコレクションになったのです」
雑誌は製本せず、原則として原形保存されているので、昔懐かしい雑誌を「手に取る」ことができる。閲覧室と開架書庫には約6,000タイトルの雑誌が最新1年分並べられているほか、カウンターで申し込めば数年分の雑誌をまとめて閲覧可能だ。
執筆や研究に活用できるポテンシャルを持っている同図書館だが、1月の移転当初は課題もあった。
「時期的に、テスト勉強する学生さんが多くて、雑誌を調べたい方の席がない状態でした。それで、テーブルや椅子をガンガン入れて閲覧席数を増やしたり、土日はエリアを区切ったりしました。オープン当初にいらした方が見たら、随分印象が違うと思います(笑)」
雑誌の中でも、特に鉄道雑誌と女性誌に力を入れているという同図書館。
「鉄道に興味のある方は多いですし、女性誌は世相を映します。開架しているものが今までより非常に多くなっているので、使いやすいと思います。多くの方に来ていただきたいです」
所蔵雑誌を使った講座「マガジンバンクカレッジ」も始まっている。
「最初のカレッジは『雑誌総合』『多摩』『鉄道』の3グループです。チラシをどうぞ」
図書館館利用もカレッジももちろん無料だ。ちなみにチラシには「都民に限る」とは書いていなかった。
<取材メモ>
インタビューの資料集めにデータベースを使ってみた。出てくる出てくる。全部はとても無理なので10冊に抑えた。閲覧テーブルに雑誌や辞書を山と積んで調べ物をする男性はプロの書き手だろうか。ああ、憧れる。
※本記事は2017年3月の取材に基づくものです
都立多摩図書館ホームぺージはこちら
(2017-06-24 岡崎道成)