【いちくり】映画評論家でも何でもない、いちクリスチャンの僕が映画を観て考えたこと

個人的な関係~「イル・ポスティーノ」より

「イル・ポスティーノ」

'95年伊

原題 IL POSTINO (THE POSTMAN)

監督:マイケル・ラドフォード

出演:フィリップ・ノワレ マッシモ・トロイージ


あらすじ

青年マリオの住むイタリアのある貧しい島に、祖国チリから追放された詩人、パブロ・ネルーダがやってくる。彼に郵便を届ける中で詩を教えてもらうようになったマリオは、今まで知らなかった表現の世界に目が開かれて行く。そんなマリオが、島一番の美女に恋をする。ネルーダの助けで彼女に詩を捧げ、晴れて2人は結婚するが、間もなく追放処分が解けたネルーダは祖国に帰る。マリオは詩人を思いつつ島の美しい音風景を録音機に綴っていく。


<注:以下ではネタバレがあります>

 

 この映画、もしネルーダが国へ帰ったところで終わっていたら、そんなに大した映画じゃなかったと思う。その後のマリオの思いが、この映画に深い味わいを生んでいるような気がする。

 

 マリオは、自分や自分の家族にとってネルーダがとても大切な人だったように、ネルーダにとっても自分が何がしかの思い出になっていると信じた。ところが、新聞記事のネルーダも、そして彼から来た手紙も、そんなマリオの思いには答えてくれなかった。

 

 この切ない気持ちを抱いて音を録っていく場面がとても素敵だ。以前は気がつかなかった身の回りの美しいもの、美しい音、そういうものを捉える感性というか、心の目とでもいうものが彼の中には確かに根付いていた。もし彼と出会わなければ、マリオは世界のそういう美しさに気づかないまま、人生を送っていたのだろう。彼との出会いはマリオに新しい世界を開いた。そしてそれは詩人との親しい、個人的な交際によって作られたものだった。

 

 僕の妻は以前、ボランティアでオーディオドラマの脚本を書いていたことがあるが、脚本家の山田太一さんに憧れている。自分で書くときも、身の程もわきまえずに「私はキリスト教界の山田太一になる!」なんて言っていた。それでとうとうファンレターまで出したことがあったが、驚いたことに返事のハガキが来た。しかも直筆の。妻は飛び上がって喜び、額に飾ると言っていた。それで調子に乗ってまた出したのだが、さすがにそうそうは来ない。個人的な知り合いでもなんでもないのだから当然だ。

 

 クリスチャンっていうのは、誰であろう、イエスさまと個人的な知り合いなのだ。僕の妻が山田太一を知ってるというのは、個人的な知り合いとは言わない。でもこの映画のマリオとネルーダの関係は、非常に個人的だった。クリスチャンとイエス様とは、そのようにまさに個人的な関係にある。

 

 L.B.カウマンという人が編集した「山頂をめざして」という本の中にこんな一節がある。

『あるとき、ボストンの一学生が、非常に心を騒がせながら、フィリップス・ブルックスのところにやって来た。彼は尋ねた。「ブルックス先生、イエス・キリストとの意識的な個人的な交わりは、キリスト教の一部ですか。」この偉大な説教者は、しばらく沈黙していたが、やがて深い感動を与える熱心さをもって答えた。「イエスとの意識的な個人的な交わりがキリスト教なのです」 』

 

 これは、普通に考えればあるわけがない。生きている時代も場所も全然違う人と、個人的に、つまりお互いに知り合いになるなど、普通はできない。でもこれが不思議なことに、イエス・キリストとはできる。そしてキリスト教は、まさにそれだというのだ。人生良く生きようとか、そういうことがキリスト教だというのではない。イエスは、僕たちの罪の身代わりとして十字架にかかった。そして3日目によみがえって、今も生きていると聖書は教えている。今も生きてるのだ。遠い時代に死んで終わったのではない。だから今の僕たちが、イエス・キリストと個人的な関係を持つことができるし、第一、自分のために死んでくれた人を無視してはいけない。そういうイエスを知ったのが、僕の出発点だ。僕の新しい人生というのは、イエスとの出会いから始まっている。新しい人生と言っても、人格ががらっと変わったとか生活が変わったとかではなく、イエスを下さるほど、自分が神様に愛され、生かされていることを知ったということなのだが。

 

「誰でもキリストにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました。」コリント人への手紙第二5章17節

 

 イエス・キリストとの出会いによって、人は新しくされ、神様との交わりの中に生きるものとされる。そしてイエスは、ネルーダとは違って、決して僕たちから離れたり、忘れたりしないのだ。

 

映画データベースallcinema「イル・ポスティーノ

Wikipedia「イル・ポスティーノ

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(2017-10-25)